2012年5月30日水曜日

猛毒の化学兵器、神経ガス「サリン」2

猛毒の化学兵器、神経ガス「サリン」

神経細胞が興奮すると、アセチルコリンという物質が、
シナプスと呼ばれる連結部分の小さな空間に放出され、
これが次の神経や筋細胞の受容体に到達することで
信号が次から次につたわりますが、次の信号を受け取るため
アセチルコリンはただちに分解される必要があります。
ところが、有機リン系のこれらの毒ガスは、
このアセチルコリンを分解する酵素(コリンエステラーゼ)と
結合してその作用を阻害してしまう(抗エステラーゼ)ため、
アセチルコリンがシナプスに過剰に蓄積して
神経細胞は信号を次に伝えることができなくなります。
現在、サリン(GB剤)、ソマン(GD剤)、
タブン(VX剤)が代表的な神経ガスで、
半数致死量はわずか0.1ミリグラムから0.4ミリグラムといわれます。
そして、この毒ガスは呼吸器からだけでなく皮膚からも
吸収されるため、防毒マスクだけでは防げません。

毒ガスとして使用されるのは、(1)毒性が高い、
(2)効果が迅速、(3)散布が容易、(4)皮膚からも吸収される、
(5)散布後、時間がたつと毒性がなくなる、
(6)貯蔵できる、(7)安価である、などの特徴があるためです。
このような理由から、化学兵器として利用される毒ガスは、
これら有機リン系以外には、マスタードガスと青酸ガスぐらいです。
非殺人型の毒ガスは、防毒マスクで容易に防げるため、
暴徒鎮圧で使用される数種類を除いて存在しません。
この毒ガスを浴びた場合は、これまたアセチルコリンと
拮抗するアルカロイドのアトロピン、有機リン系農薬の解毒剤として
開発されたPAMなどが用いられます。
いわば、毒をもって毒を制するわけです。

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